満を持して神奈川県唯一の村そして唯一の未到の地である清川村へ。だめかと思ったがなんとか本厚木13時40分発のバスに間に合った。乗り遅れたら1時間待ちだった。いいことばかりじゃなくて、その代償としてランチを食べたり買ったりできなかった。ちょうど一時間くらいで終点宮ヶ瀬に到着。カープと起伏の多い道でちょっとジェットコースター気分だった。
宮ヶ瀬は思ったよりずっと観光地でほとんどの店がまだやっていた。一時間後のバスではもう閉まっていた気がする。揚げカレーパンともつ煮込みを買って景色を見ながら食べることにした。水面と公園を見おろせる階段の最上段に座ってカレーパンをかじっていたら手にものすごい衝撃を感じてカレーパンが弾き飛ばされた。トビだ。迂闊だった。空を見上げていれば気づけたはずだ。持ち去られはせず地面に落ちてしまったが、癪なので食べることにした。警戒を怠らず一気に食べてしまう。
階段を降りて、子供用の汽車が走っている広場をつっきり、歩行者専用の吊り橋を目指す。この吊り橋も16時までということで一本遅いバスなら渡れなかった可能性もある。足取りにあわせて細かく揺れる橋を渡り終えると乗ってきたバスの経路に接続する。その先はバスの通った道を逆に進むことになる。
左手の橋で湖を渡る。右折して県道64号に入る。しばらく高台から湖面を望む。トンネルを1回抜けたほかは斜面からの柱で下支えされた半分橋のような道を進んでいく。太陽が丹沢の山影の上から湖面を輝かせていた。やがて水はなくなって土が露出するが、よく見るとちょろちょろ細い流れが走っている。湖面をすべるカモの集団を一回見た以外は動物の姿は見えなかった。
土山峠というバス停の近くで湖畔から離れて山と山に挟まれた谷間を曲がれくねりながら下る形になる。歩道にはところどころ5センチくらいの厚みで雪が残っていた。最初先人の足跡を文字通り踏襲しようとしたが坂道なので滑ってしまう。ふつうに新しい雪の上を歩いた方がずっと快適だった。
徐々に民家が増えていく。新道と旧道が二股にわかれるところで旧道に入り込むと完全に集落の中だ。ちなみに新道は山を切り開いて作られた道だ。道幅は広いがかなりのぼらなくてはいけない。バスも旧道を通る。旧道と新道が合流すると清州村中心部だ。役場、郵便局、道の駅、ドラッグストアなどが並んでいる。あたりの地名は煤ヶ谷で合併前の村名らしい。
目的を果たした気がするが、歩けるところまでは歩こうと思う。バスの経路で本厚木までいくのはかなり迂回する道を通り距離的に遠いので、右折して伊勢原方面の道に入り込んだ。今日の散歩で初めて行政区界をまたぎ厚木市へ。ちょっと戯れに裏道を通ったりして(これまではそういう選択肢があまりなかった)、それが元の道に合流するところに久々にバス停があった。七沢だ。この先タイミングがあえば乗ってしまおう。まあでもせめて伊勢原市には入っておくかくらいの気持ちだった。
伊勢原市は遠かった。夕闇がすっかり深い。とたんに街並みがさみしくなるが、裏腹に、ここまで歩いたのだから伊勢原駅まで歩いてしまおうという気になった。しかしその先が遠いのはいつものことだ。新東名と東名を立て続け(というほど近くはないが)にくぐったさきで道が二手にわかれる。右の方が賑やかそうだがちょっとふくらんで気よりが長いように見えた。それで茫漠とした夜の道を進んでいく。長後街道を過ぎて駅に向かう道に入り込むとさすがに店が増えてきた。チェーン以外の飲食店はかなりはやっていそうだしスナックなど夜の店もある。伊勢原というと観光地のイメージが強いがこうしてみるとふつうの郊外のベッドタウンみたいだ。
伊勢原駅到着。さすがに歩き過ぎた。
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